« トリノ五輪開幕v(^^)v | Main | しゅん、歯医者さんにいく »

February 14, 2006

上村愛子とモーグル採点基準

モーグル女子、予選5位で通過した上村愛子選手は残念ながら5位に終わりました。コブの苦手な私にとってはモーグラーは憧れの存在。特に笑顔が素敵な美人アスリートの上村選手はトリノ五輪では最も注目する選手のひとりでした。さすがに決勝はリアルタイムでは見られなかったので録画で観ましたが、とてもカッコいい滑りで観客を魅了していましたね。第2エアの3Dも完璧に決まって高得点が期待されましたが、残念ながら点数が伸びず、後続の選手に抜かれて5位に終わってしまいました。

こちらの記事の中で「もっと高い技術を求めるなら他の女子選手と同じことをしては駄目だ」と感じたと語っている上村選手。まさに血のにじむような猛特訓の結果、「コーク720」を完成させたわけです。3Dを取り入れている女子選手は他にもいますが、あの予選や決勝で魅せてくれた上村選手ほどの完成度の高さはどの選手も持ち合わせていません。観客を大いに魅了したエアを取り入れたのに結果は5位。何故?って思ってしまいましたが、そこにはモーグル競技の採点基準の皮肉さがあるのです。

モーグル競技は250mほどのコブコブの急斜面(今回のコースは223m 斜度26.5)を途中、2回のエア(ジャンプの技)を入れて滑り降りるフリースタイル・スキー競技。語源はノルウェー語のモーグルMogul(雪のコブ)だそうです。ただ単にタイムだけではなく、ターン技術とエア(ジャンプの技)技術を加味して採点されるのです。採点比率はターンが50%(←最も重視される項目)、エアとタイムがそれぞれ25%となっています。以前はスピードが最も高い比率だったそうですが、ターンせずに直滑降する選手が続出したためにルールが改正されたのだそうです。スキー競技としての総合的な技術が要求される競技なのですね。

Wikipediaでは採点方法の欄で「基本的に5人のジャッジがターン点、2人のジャッジがエア点を採点。タイム点と合わせ30点満点で競う。ターン15 エア7.5 タイム7.5」と説明されていますが、これだけではよく分からなかったので、もう少し詳しく調べてみることにしました。

●●ターン●●
ターンはスタートした地点からゴールまでを結ぶ最短距離(フォールライン)をコブを使って左右にリズミカルに滑り降りる点を評価します。この際、可能な限りスキー板を雪面に接触させ、裏側が見えないようにしなくてはいけません。頭部を動かさず、肩はフォールラインに対して直角。上体の動きは最小限に保つことが要求されます。ジャッジは5人。1人持ち点5点満点。最高点、最低点を2つ削ってトータル3人の合計(15点満点)がターン点となります。採点ガイドラインを見ると4.6以上が「最高」、4.1~4.5が「とてもよい」となっています。今回、優勝したカナダのジェニファー・ハイル選手のジャッジは4.5~4.8。上村選手は4.0~4.3という評価でした。

●●エア●●
2つのエア(同じモノではいけない)の完成度と難易度で採点されます。大会ごとに難易度の高い技を仕掛ける選手が増えてきているのですが、いくら難易度の高い技を使っても完成度が低いと減点対象となります。エアにおけるフォームは「型と着地の質」「高さと距離」「コース内での姿勢」を見て採点します。エアは大きく5つ(回転はさらに4つに分類される)のカテゴリに分かれます。スプレッド(両手両足を大の字に広げる)、ツイスター(上半身と下半身を逆にひねる=ツイスト)、ダフィー(両足を前後に広げる)、バックストラッチャー(両足を後ろへ反らせる)、回転技(身体を360度回転させるヘリコプターや縦回転のバックフリップやフロントフリップ、そして上村選手のような斜め2回転技など)。その技の難易度によって係数が変わってきます。上村選手の第1エア(ヘリコプター)は係数1.390、第2エアの「コーク720」は1.650となっています。選手達はそれぞれの技を2~3ないし4組み合わせて(連続で行う)難易度を上げるのです。そして、エアのジャッジは2人。1エアの最高点は2.5。2人の平均にエア難易度係数をかけた数値がエア点となります。因みに今回の上村選手のエア点のジャッジは・・・・
 第1エア平均1.65(ジャッジは1.7と1.6)×難易度1.390=2.29
 第2エア平均2.10(ジャッジは2人とも2.1)×難易度1.650=3.46
  エア・トータル=5.75
  (比較)・・・優勝のハイル選手は第1エア2.40(2.4と2.4)×1.390
  第2エア2.25(2.3と2.2)×1.390 で、トータル6.45


●●タイム●●
タイムは機械的に算出します。ただし、競技会当日、選出された4人のペースセッターの演技(ターン、エア、タイムを基準に従って採点)の中での最高点を得たペースセッターのタイムがその競技会のペースタイムとなるのだそうです。ペースタイムと同タイムの得点は5.625点(←満点7.5点の75%)。タイムの算出の計算は少々ややこしいのですが、次のグランジュの式として知られる計算式で簡単に計算できるのだそうです。
 タイム点 = 13.625 - 8×競技者のタイム÷ペースタイム
 今回の上村選手のタイムで計算してみると・・・・
  13.625-8×28.47秒÷28.96秒=5.76
  因みに優勝のハイル選手は26.69秒でタイム点は6.25



調べてみるといろいろなことが見えてきました。私はモーグル競技の専門家ではありませんが、最後に思ったことをつらつらと書いてみます。

■■ターン技術とタイム■■
今回の大会では上位選手よりも2秒近くも遅いタイムだった上村選手。どこかの記事で上村選手はターンが苦手だと書かれていましたが、モーグル競技の基本はやはりターンなのでしょう。それも入りからの高速ターン。そして、エア着地後のターン。これは下半身が強靱なサスペンションの働きをしないとできないこと。どれだけ正確にかつ効率的に、そして果敢にコブをこなしていけるか。大会後のインタビューで「まだまだ滑っていたい」と語った彼女。ターンの完成度をより上げてタイムを縮め、更なる進化を遂げて欲しいです。3Dのためにスピードを殺さざるを得なかった因果な結果でしたが、タイム点だけは機械的ですからタイムを上げれば上げるだけ上位になる確率は高いのです。がんばれ~。

■■エア点は全体の25%■■
上村選手が完璧に決めた3D技ですが、実際の点数は両ジャッジとも2.1。これは採点ガイドラインでは「最高」ランクですが、その最低の値。優勝のハイル選手の第1エア(どんな技だったか覚えていません)は上村選手よりも難度の低い技で2人ともほぼ満点の2.4というジャッジ。係数を考えても割に合わないです。上村選手の第1エア(ヘリコプター)の評価は何と1.7と1.6。????。高さと着地の差なのでしょうか。でも全体から見るとやはりエアの比重は低いのです。これと同じ結果だったのが長野オリンピックの里谷選手の優勝だったようです。詳しくはこちらを参照してください。今回、上村選手は残念な結果に終わりましたが、彼女の挑戦は多くの観客を魅了しました。私もコーク720が見事に決まったときは身震いしてしまいました。エアはモーグル競技の大きな見せ場。今後、さらに難度の高い技で臨む選手が増えることでしょう。そして、難易度係数もそれに合わせて高くなっていくのではないでしょうか。女子モーグル競技の方向性を変えていった先駆者の上村選手に大いなるエールを送りたいと思います。

■■客観的といってもやはり・・・■■
スキー競技の中ではアルペンやジャンプと違い、ジャッジによる採点のモーグル。今回の採点でもエッ?と思ってしまうようなジャッジがありました。ターンのジャッジ5人の国籍はアメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、スイス。その中でも自国選手に甘いなぁと思う採点をしたのがアメリカのジャッジ。今回10位となったアメリカ選手のターンにはなんと優勝のハイル選手(4.7)並みの4.6というジャッジ。他のジャッジは4.0が2人、4.3が2人。明らかに主観が入ったような採点。最高と最低はカットされると言ってもこれはないよなぁと思ってしまいます。オリンピックでは必ずもめる主観的なジャッジ。是非とも公正な審判を・・・。

上村愛子のRoad to Torino
 上村愛子オフィシャルブログ~試合直前の記事にTBさせてもらいました(^^)



◆◆◆ランキングに参加しています◆◆◆
応援のクリックをよろしくお願いします・・・・m(_ _)m
 ↓ ↓ ↓
banner_02

|

« トリノ五輪開幕v(^^)v | Main | しゅん、歯医者さんにいく »

Comments

すいません。以下のコメントが、文字化けなどを直しているうちに消えました。

内容:
初めまして。とても共感できる記事でした。
上村選手の滑りを見て感動し、順位に嘆き、
思い立ってブログに記事にしました。

今回はその拙記事にTBさせていただきました。
私も「トリノにかけた上村」を忘れないでしょう。
--

重ねてすいません。
それと、上村の魅力について、もっと書くことが出来ればよかったのですが、
いずれ、彼女自身が内面を吐露するのではないかと期待しています。
さらにのちにはコーチや解説者として、
大変な人材になると思います。
モーグルに限らず、すべてのアスリートの励みとなるような。

Posted by: 北風史 | February 15, 2006 04:44 AM

北風史さん、早速のご返事ありがとうございます。コメント消えは気になさらないでください。
今回の上村選手の滑りで、真のアスリートの生き様を魅せてもらったような気がします。内面の吐露はオリンピック終了後のブログでの報告が最初でしょうか。楽しみにしています。そして、W杯や4年後のバンクーバーでの更なる進化も・・・・。

Posted by: グリンデル★お返事★ | February 16, 2006 04:39 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 上村愛子とモーグル採点基準:

» トリノ五輪03:成田童夢予選落ち、日の丸飛行隊失速 [メフィスト賞受賞者津村巧のテレビ・世相日記]
↑拙作です↑1. トリノ五輪03:成田童夢予選落ちロイターから:五輪=スノーボード男子HPでホワイトが金、童夢は予選落ち トリノ冬季五輪は12日、スノーボード男子ハーフパイプ決勝を行い、19歳で「ザ・フライング・トマト」の愛称を持つショーン・ホワイト(米国...... [Read More]

Tracked on February 14, 2006 08:29 AM

» 愛子5位!~トリノ五輪モーグル~ [大阪、おおさか、OSAKA]
トリノ冬季オリンピックのフリースタイルスキー・女子モーグルの決勝が、20人の選手 [Read More]

Tracked on February 14, 2006 10:29 AM

« トリノ五輪開幕v(^^)v | Main | しゅん、歯医者さんにいく »